口臭から健康を考える

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口臭から健康を考える

新聞にこんな記事がありました。 東京都立足立高校で東京医科歯科大「息さわやか外来」の歯科医師らを招き、3年生の生徒を対象に口臭・歯科チェックや健康教育が行われました。口臭チェックは同外来で行われている「官能検査」と呼ばれる手法で、スクリーン越しに生徒が息を吐いて医師が臭いをかぐというもの。同校は以前から、虫歯や歯肉炎など歯周疾患のある生徒が都内高校生の平均を大きく上回っていた。生徒の生活習慣を調べると、朝食を抜くなど食習慣が整っていない生徒ほどストレスが強く、間食が多く、口内環境も悪いことがわかった為、歯と口の健康教育を通じて生活習慣を改善する取り組みを行っている。 この日の健康教育では、「口の中は朝起きたときが一番臭う。朝ごはんをちゃんと食べると口臭が抑えられる」などと説明。間食を控え、バランスのよい食事と歯磨きを習慣付けるようにアドバイスした。養護教諭の西川路由紀子さんは「朝食を食べよう、歯を磨こうといった直接的な呼びかけは、思春期の子供にはなかなか届かない。口臭に焦点を当てることで、自分の健康に関心を持つきっかけになる」と話す。 実際、この取り組みを始めてからは、歯周疾患がある生徒の割合が減り始めているという。 東京医科歯科大の川口陽子教授(健康推進歯学)は「歯の健康や食習慣は幼児期・学童期のうちは親の目が届くが、思春期には届かなくなりがち。この時期に、口臭予防をきっかけとして歯磨きの動機付けをし、食習慣についても指導する効果は大きい」と話している。(読売新聞10月25日付) 「おじいちゃん、お口くさ~い・・」なんてCMが昔ありましたが、口臭は自分では以外に気づきにくく、知らないうちに周りの人に不快感を与えてしまいがちです。 実際、近くで話しかけられて「んん・・・」と困惑した経験が皆さん一度や二度はあると思います。家族間でしたら指摘してあげることもできるでしょうが、友達や知人となるとやはり遠慮して、息を止めるか一歩引いて言えずじまい、ということが多いのではないでしょうか。 「口臭」は口の中の細菌や汚れに起因することが多く、歯垢や歯石の付着が多ければ強くなります。歯並びが悪かったり、冠などの被せ物がぴったり合ってなく隙間があることなども、ハミガキがしっかりできず、食べかすが残りやすく歯垢や歯石の付着が進みやすいため、口臭の原因となします。口呼吸の人も口臭が強くなりがちです。 以前「顔面マッサージロボット」の中でドライマウスのことを書きましたが、唾液が十分に分泌されていれば、唾液の殺菌作用や自浄作用が働き口腔内環境は整えられ、口臭は抑えられます。しかし、朝起きた時や空腹時、ストレスや緊張等により唾液が減少すると口臭を発するようになります。 また、ニンニクやタマネギなど臭いの強い食物やお酒なども口臭の原因となります。これらの臭いは口から直接臭うだけでなく、アリシン等の臭いの成分が胃腸から血液中に取り込まれ、肺に運ばれて呼気自体が臭うということになります。 また、生理中や妊娠中も口臭が出ることがあります。 口腔内の病気としては、歯肉炎・歯周病、虫歯やドライマウスなどが口臭の原因となします。 内科的な疾患では、身近なものではカゼなどで高熱が出たり鼻が詰まったときなどは口呼吸になりやすく、このため口が渇き一時的に口臭が強くなることがあります。糖尿病は甘酸っぱい口臭が特徴的です。他には、胃炎や逆流性食道炎などの消化器疾患、蓄膿症やアデノイドなど耳鼻咽喉科系疾患、また、肝臓病、腎不全、癌なども口臭を伴うことがあります。 あなたは愛する人の前で「はぁ~」できますか?
< 2007/10/27 >

再結晶化と細菌付着抑制効果

皆さんは「プラークバイオフィルム」という言葉を聞いたことがありますか? プラーク(歯垢)なら知っているという方も多いと思います。歯の表面に付着した白っぽいネバネバした物質で、多量の細菌とその代謝物の塊です。このプラークと唾液中のカルシウムやリン酸が反応して石灰化したものが歯石です。 では、バイオフィルム(生物膜)とはいったい何で、それは何を意味しているのでしょうか? 一般的にバイオフィルムとは、細菌のバネバした分泌物よって細菌等が包み込まれた複合体が何らかの表面に付着した状態のものをいいます。   この付着は強固で、細菌はこの中で守られ増殖し、バイオフィルムは成長していきます。抗生物質等に対しても強い抵抗性をもちます。 したがって、口腔内のプラークがバイオフィルムであるということは、容易に歯磨きでは落ちないしデンタルリンスで洗い流すことや抗生物質などで退治することもできない、ということを意味しています。   そんなプラークバイオフィルムが虫歯や歯周病の主たる原因ですから、定期的なPMTCや歯石除去がとても大切になってくるわけです。 PMTC(ピーエムティーシー)とは Professional Mechanical Tooth Cleaning の略です。 これは、私たち専門家(Professional )が、機械を使用して(Mechanical )、歯(Tooth)の表面からプラークバイオフィルムを綺麗に剥がしとる(Cleaning)、というもので、その後に研磨して仕上げます。 目に見えない微細な傷が残ってしまうと細菌が付着しやすくなってしまうので、研磨はとても大切です。   山下歯科医院では、研磨ペーストを用いたPMTCの後に、さらに「リナメルPMTC最終仕上げペースト」を使ってトリートメントケアを行なっています。 目で見てわかる光沢感、舌で触って感じるツルツル感は多くの患者さんに実感頂けているようで私たちもうれしく思っていましたが、このほどこの効果に加えて、新しい研究データが届きましたのでお知らせします。   そのデータとは「細菌の付着を抑制する」というもの。 リナメルPMTC最終仕上げペーストの作用により微細な傷が修復されるとともに、この《ナノ粒子ハイドロキシアパタイト》の「再結晶化効果」によって得られた滑らかな歯面には、細菌が付着しにくくなることがわかったのです。 それはプラークバイオフィルムの形成を妨げ、虫歯や歯周病の発症リスクを最大限に下げられるということにほかなりません。 エナメル質の修復効果でつきにくくなるステイン(着色)、再石灰化効果で薄くなるホワイトスポット(白濁)など、透明感のあるつややかな歯面に蘇らせる目に見える美しさに加え、目に見えないレベルでの環境が整い虫歯予防への効果も明らかになった”歯のトリートメント”。 当然、プラークも作られにくくなり、ブラッシングが楽になります。 (株式会社サンギの研究による 株式会社オーラルケア) 電子顕微鏡画像写真(リナメル処理の有無による違い)も見ていただけますので、PMTCおよびリナメルについてお気軽にお尋ねください。 なお自宅でのセルフケアにご使用いただける「アパガードリナメル」も取り扱っております。
< 2007/10/23 >

インクジェットプリンターで人工骨

近年、歯周病により歯の根の周りの骨(歯槽骨)が侵され吸収し抜歯を余儀なくされていた症例でも、根の周りに骨を再生させて歯を残すことができるようになってきました。 また、歯の欠損にインプラントを埋め込む手術の可否や予後に大きく影響をあたえる要因のひとつに、埋め込むアゴの骨が十分にあるか?ということがありますが、アゴの骨の厚みや幅が足りない症例に骨を造成してからインプラントを埋め込むという技術も確立されてきています。 これら歯科臨床における骨再生(あるいは造成)療法には、アゴの奥など十分な骨量があるところから骨を採取して足りないところに足す「自家骨移植」や人工的な骨補填材などを用る「人工骨移植」などがあります。しかし、一定条件の下でのみ効果的で、再生量も局所的で限られています。 さて、皆さんが「骨移植」と聞いて思い浮かべるのは、ケガや癌などの手術で骨が欠損したり、先天的な病気で骨の発育が悪かったりしたときに受ける骨の塊としてのイメージだと思います。 やはり、腸骨(腰の骨)などの自分の骨を一部切り取って患部に接ぎ足す「自家骨移植」と、焼結した水酸化アパタイト等の人工の骨を使う「人工骨移植」があり、国内でのこうした手術は移植技術の進歩などで2004年では3万症例を超えています。 しかし「自家骨移植」は、健康な部位への侵襲、切り取った部位の骨の変形などのリスクがあり、より優れた人工骨の研究開発が進められているわけです。 東京大学医学部附属病院のティッシュ・エンジニアリング(組織工学)部と医療技術開発ベンチャーのネクスト21(東京都文京区)の研究チームは、インクジェットプリンターを使って個々の必要形態に合わせて「カスタムメイド人工骨」をつくる技術を開発し、東大病院にて06年3月から07年7月にかけ「臨床研究」として患者10人の顔面部治療に適用し、形状改善効果と安全性を確認しました。 インクジェットプリンターで人工骨をつくるなどと聞くと、とても驚きですが、なんだか身近にも感じますね。 その仕組みは、まず患者の骨のCT画像をもとに、コンピューターで患部にぴったり合った形を設計します。次に、インクジェット方式の印刷技術を使い、紙の代わりに置いたリン酸カルシウム粉末の薄い層に、インクの代わりの硬化剤を噴射し、設計した形に『印刷』していく。硬化剤が当たった部分だけが固まり、厚さ0・1~0・2ミリの骨の断面ができます。この印刷を繰り返し断面を何層にも積み重ねていくことにより立体的な人工骨ができあがる、ということのようです。 バームクーヘンみたいな感じですね。 この人工骨は周囲の骨組織とのなじみもよく、自家骨移植に比べ手術時間は平均約3時間短縮され、入院は約1週間で症状が軽い場合には日帰り手術も可能だという。ただしこの人工骨は焼き固める製法ではないため強度がやや劣るので、当面は複雑な形状が必要とされる顔面や頭部に限って使っていくということです。  東大病院は、年内にも国内9医療機関と協力し、数十人規模の「臨床試験(治験)」を始めるということです。将来は手足や背骨など強度が必要な部位にも使えるようにさらに研究が進められています。
< 2007/10/17 >

顔面マッサージロボット

口の中が乾き食事や会話が辛くなる「ドライマウス」をはじめ口や顎などの治療のための顔面マッサージロボットが早稲田大学理工学部と朝日大学歯学部の研究により開発され、公開されました。年内にも臨床研究がスタートするということです。 そこで、今回は「ドライマウス」のお話を少し。 皆さんは、健康な成人で一日平均どのくらいの唾液が分泌されるかご存知ですか?正解は約1.5リットルです。ペットボトルで思い浮かべてみてください。かなりの量ですよね。 梅干などの酸っぱいものを見たり食べた時に唾液がじゅわ~っと出たことを感じ、緊張したときは逆に口が渇き唾液が出ないことを感じますが、普通私たちは唾液が出ていることを常時感じ続けてはいません。ですからちょっと見当がつきにくかったと思います。 唾液は「唾液腺」と呼ばれる器官で作られます。3大唾液腺は耳下腺、顎下腺、そして舌下腺で、耳の下が腫れる通称「おたふく」は耳下腺の急性炎のひとつです。ほとんどの唾液はこの3つの腺で作られ、細い管を通って口の中に放出されます。出口は上奥歯付近のほっぺたと下前歯の裏側の舌の下にあります。下前歯の裏側や上奥歯の外側に歯石が付着しやすい理由はここにもあります。 では、唾液の役割を考えてみましょう。 子供のころ、転んで擦りむいたとき思わずつばで拭いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?まあ、これはほんの気休めでしかありませんが、唾液には殺菌作用があります。一日に1.5リットルもの唾液が口の中に流れ出ることにより、歯や粘膜や舌を洗い流す自浄作用とともにとても大切な役目です。 朝起きたときに口の中がなんだかネバネバしてまずく感じた経験がある方も多いと思います。これは、寝ている間は唾液の流量が減るため唾液のこれらの作用が充分に機能せず、その結果口腔内の細菌が増える事に関係しています。 「ドライマウス」は起きている時も正常の唾液量を大きく下回る状態で、その患者数は潜在患者を含め800万人とも言われています。原因としては、降圧剤やアレルギー薬や抗うつ剤などの「薬による副作用」、生活習慣病の「糖尿病」や現代人の最大の敵「ストレス」などがあげられます。 唾液量の低下は、日常生活の上で食事や会話が辛くなったり舌がヒリヒリするなどの症状によって自覚することが多いのですが、唾液の殺菌作用や自浄作用が働きにくくなることを考えると虫歯や歯周病の発生や悪化の原因となることは明らかで、症状が軽くても「たかがドライマウス・・」と放置しておくことはとても危険なことと分かっていただけると思います。 赤ちゃんはあふれでる「よだれ」でも分かるように唾液量はとても豊富です。成長と共に25歳くらいまでは増え続け適量となり、その後、悲しいかな老化現象により唾液量は減少していきます。ドライマウスという診断がつかないまでも、唾液量の低下はやはりさまざまな弊害を伴うものです。 この老化現象に少しでも立ち向かうには、よく噛むことがとても大切です。日常的にキシリトールガムなどを活用するのもよいでしょう。また、唾液腺周囲へのマッサージもロボットが開発されるくらいですから効果的です。耳の下やアゴの下、あるいはほっぺたを手のひらや親指の腹で少し押さえながら円を描くように動かしてみてください。 きっと唾液がじわっと出てくるのを感じられると思います。
< 2007/10/10 >

歯が800本

米ユタ州大学自然史博物館が、800本の歯と強力なアゴを持った新種のカモノハシ恐竜の化石を発見したと発表しました。 ユタ州南部の岩石砂漠で見つかった縦約55cm×長さ約90cmのほぼ完璧なこの頭部化石は、頑丈なアゴに植物を切り裂くための小さな歯が800本以上びっしり生えているのが特徴で、約7500万年前の白亜紀後期のものと見られています。研究員の一人は「もっとも頑丈なカモノハシ恐竜の一種だ。行く先々であらゆる草を食べまくり、ペンペン草も残らない。芝刈り機の白亜紀版と思えばいい。」とコメントしたそうです。 それにしても、歯が800本とはオドロキ!びっくりです。私たち人間の歯は、親知らずを入れて32本です。まれに「過剰歯」といって上顎前歯の真ん中や親知らずのさらに後ろに歯が存在することがありますが、どちらかと言えば親知らずは退化して無くなっていく方向にあります。ヒトは食材を調理して食べやすくする知恵を持ち進化してきましたが、哺乳類の歯数は基本的に44本ですから、随分減らしてしまったものです。 ことに最近は「やわらかい」=「おいしい」という傾向にあり、ますますあごは細くなり、歯数はさらに少なくなっていくのでしょうか。 さて、皆さんの中には犬や猫、小鳥や熱帯魚などペットを飼っている方も多いと思います。そういう我が家にも犬が一匹おります。力丸(トイプードル・3才)と申しますが、気は優しくて愛嬌たっぷりで・・・、あっ、横道にそれました。彼の自慢話はまた機会がありましたらということにして、皆さんは飼っている犬や猫の口の中を見たことがありますか?歯が何本あるか数えたことはありますか? 犬は42本、猫は30本が基本です。臼歯部(奥歯)は山が連なったような形をしていて、どこからどこまでが一本の歯かちょっと判別しにくいところもありますが、この機会に一度口の中を覗いてみてはいかがでしょうか?人間と同じで歯石も結構付いていたりしますよ。 ただ、くれぐれも飼い犬(猫)に手を咬まれませぬように。
< 2007/10/05 >