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インクジェットプリンターで人工骨

近年、歯周病により歯の根の周りの骨(歯槽骨)が侵され吸収し抜歯を余儀なくされていた症例でも、根の周りに骨を再生させて歯を残すことができるようになってきました。 また、歯の欠損にインプラントを埋め込む手術の可否や予後に大きく影響をあたえる要因のひとつに、埋め込むアゴの骨が十分にあるか?ということがありますが、アゴの骨の厚みや幅が足りない症例に骨を造成してからインプラントを埋め込むという技術も確立されてきています。 これら歯科臨床における骨再生(あるいは造成)療法には、アゴの奥など十分な骨量があるところから骨を採取して足りないところに足す「自家骨移植」や人工的な骨補填材などを用る「人工骨移植」などがあります。しかし、一定条件の下でのみ効果的で、再生量も局所的で限られています。 さて、皆さんが「骨移植」と聞いて思い浮かべるのは、ケガや癌などの手術で骨が欠損したり、先天的な病気で骨の発育が悪かったりしたときに受ける骨の塊としてのイメージだと思います。 やはり、腸骨(腰の骨)などの自分の骨を一部切り取って患部に接ぎ足す「自家骨移植」と、焼結した水酸化アパタイト等の人工の骨を使う「人工骨移植」があり、国内でのこうした手術は移植技術の進歩などで2004年では3万症例を超えています。 しかし「自家骨移植」は、健康な部位への侵襲、切り取った部位の骨の変形などのリスクがあり、より優れた人工骨の研究開発が進められているわけです。 東京大学医学部附属病院のティッシュ・エンジニアリング(組織工学)部と医療技術開発ベンチャーのネクスト21(東京都文京区)の研究チームは、インクジェットプリンターを使って個々の必要形態に合わせて「カスタムメイド人工骨」をつくる技術を開発し、東大病院にて06年3月から07年7月にかけ「臨床研究」として患者10人の顔面部治療に適用し、形状改善効果と安全性を確認しました。 インクジェットプリンターで人工骨をつくるなどと聞くと、とても驚きですが、なんだか身近にも感じますね。 その仕組みは、まず患者の骨のCT画像をもとに、コンピューターで患部にぴったり合った形を設計します。次に、インクジェット方式の印刷技術を使い、紙の代わりに置いたリン酸カルシウム粉末の薄い層に、インクの代わりの硬化剤を噴射し、設計した形に『印刷』していく。硬化剤が当たった部分だけが固まり、厚さ0・1~0・2ミリの骨の断面ができます。この印刷を繰り返し断面を何層にも積み重ねていくことにより立体的な人工骨ができあがる、ということのようです。 バームクーヘンみたいな感じですね。 この人工骨は周囲の骨組織とのなじみもよく、自家骨移植に比べ手術時間は平均約3時間短縮され、入院は約1週間で症状が軽い場合には日帰り手術も可能だという。ただしこの人工骨は焼き固める製法ではないため強度がやや劣るので、当面は複雑な形状が必要とされる顔面や頭部に限って使っていくということです。  東大病院は、年内にも国内9医療機関と協力し、数十人規模の「臨床試験(治験)」を始めるということです。将来は手足や背骨など強度が必要な部位にも使えるようにさらに研究が進められています。