口の中が乾き食事や会話が辛くなる「ドライマウス」をはじめ口や顎などの治療のための顔面マッサージロボットが早稲田大学理工学部と朝日大学歯学部の研究により開発され、公開されました。年内にも臨床研究がスタートするということです。
そこで、今回は「ドライマウス」のお話を少し。 皆さんは、健康な成人で一日平均どのくらいの唾液が分泌されるかご存知ですか?正解は約1.5リットルです。ペットボトルで思い浮かべてみてください。かなりの量ですよね。 梅干などの酸っぱいものを見たり食べた時に唾液がじゅわ~っと出たことを感じ、緊張したときは逆に口が渇き唾液が出ないことを感じますが、普通私たちは唾液が出ていることを常時感じ続けてはいません。ですからちょっと見当がつきにくかったと思います。
唾液は「唾液腺」と呼ばれる器官で作られます。3大唾液腺は耳下腺、顎下腺、そして舌下腺で、耳の下が腫れる通称「おたふく」は耳下腺の急性炎のひとつです。ほとんどの唾液はこの3つの腺で作られ、細い管を通って口の中に放出されます。出口は上奥歯付近のほっぺたと下前歯の裏側の舌の下にあります。下前歯の裏側や上奥歯の外側に歯石が付着しやすい理由はここにもあります。
では、唾液の役割を考えてみましょう。 子供のころ、転んで擦りむいたとき思わずつばで拭いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?まあ、これはほんの気休めでしかありませんが、唾液には殺菌作用があります。一日に1.5リットルもの唾液が口の中に流れ出ることにより、歯や粘膜や舌を洗い流す自浄作用とともにとても大切な役目です。 朝起きたときに口の中がなんだかネバネバしてまずく感じた経験がある方も多いと思います。これは、寝ている間は唾液の流量が減るため唾液のこれらの作用が充分に機能せず、その結果口腔内の細菌が増える事に関係しています。
「ドライマウス」は起きている時も正常の唾液量を大きく下回る状態で、その患者数は潜在患者を含め800万人とも言われています。原因としては、降圧剤やアレルギー薬や抗うつ剤などの「薬による副作用」、生活習慣病の「糖尿病」や現代人の最大の敵「ストレス」などがあげられます。
唾液量の低下は、日常生活の上で食事や会話が辛くなったり舌がヒリヒリするなどの症状によって自覚することが多いのですが、唾液の殺菌作用や自浄作用が働きにくくなることを考えると虫歯や歯周病の発生や悪化の原因となることは明らかで、症状が軽くても「たかがドライマウス・・」と放置しておくことはとても危険なことと分かっていただけると思います。
赤ちゃんはあふれでる「よだれ」でも分かるように唾液量はとても豊富です。成長と共に25歳くらいまでは増え続け適量となり、その後、悲しいかな老化現象により唾液量は減少していきます。ドライマウスという診断がつかないまでも、唾液量の低下はやはりさまざまな弊害を伴うものです。 この老化現象に少しでも立ち向かうには、よく噛むことがとても大切です。日常的にキシリトールガムなどを活用するのもよいでしょう。また、唾液腺周囲へのマッサージもロボットが開発されるくらいですから効果的です。耳の下やアゴの下、あるいはほっぺたを手のひらや親指の腹で少し押さえながら円を描くように動かしてみてください。 きっと唾液がじわっと出てくるのを感じられると思います。