お釈迦になる
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4月18日は「良い歯の日」です。 もちろん「4・よ」と「18・いは」数字の語呂合わせ、言葉遊びです。
ところで、今日4月8日を「今日は何の日」を検索してみると、花祭り、忠犬ハチ公の日、参考書の日、ヴィ-ナスの日、タイヤの日、紙供養の日、米の日(毎月)、屋根の日(毎月)、果物の日(毎月)、歯ブラシの交換日(毎月)などが出てきました。 この中で一番有名なのは、花祭り(潅仏会) お釈迦様の誕生日でしょうか。
お釈迦様といえば、物が壊れたりダメになることを「お釈迦になる」といいますが、その語源をご存知でしょうか? いくつか説があるようですが、そのうち一つをご紹介しましょう。
もともと鋳物屋さん(金属を溶かして鋳型に流し込み成型して金属加工品物を作る職人さん)などで使われていた言葉で、「お釈迦」とは不良品とか不合格品の意味だったそうです。 昔は今のようにガスバーナーも電気炉もなかったので、火力や火の温度管理がとてもとても難しかったことと思います。金属を溶かして鋳込む時に火が強すぎると、温度が上がり過ぎて上手く鋳込めず、不良品が出てしまうのです。 そんな失敗した時には、 はっさん:「どうした?」 くまさん:「しくじった。火が強かった・・・」 なんていう会話があったことでしょう。 「火が強かった」は、江戸っ子は「ひ」が「し」になってしまいますから「しがつよかった」になり、これが「4月8日だ」と聞こえることから、4月8日=お釈迦様の誕生日に引っ掛けて、不良品や欠陥品が出ることを「お釈迦になる」と言い始めたらしい、という説です。 昔の人もこうした言葉遊びが大好きですよね。
歯科治療でも、虫歯で失った歯質に金属を詰めたり金属をかぶせたりします。これらインレーやクラウンも、型を取って歯形模型を作り、この模型より鋳型を作り、金属を溶かしてこれに鋳込んで製作するのです。この時ももちろん溶かした金属の温度管理が重要で、高すぎるとしっかり鋳込まれず使い物にならないことは今も同じです。 ただ、私たちはこれを「お釈迦になる」とは言わず「なめられた」と表現します。その失敗した金属の表面が、ちょうどソフトクリームをペロっとなめた時のように、ツルっとしていて凹んでいるからでしょうか。
それではお釈迦様つながりでもうひとつ。 お釈迦様は母親の胎内に3年3か月もいたんだそうです。そして生まれたとたんに歩き出し、「天上天下唯我独尊」と言ったというのは有名ですよね。でも生まれたばかりの赤子ですから、案の定?その時周りにいた者たちが「この小僧、生意気だ。やっちまえ~」とばかりに、みんなでお釈迦様の頭をポカポカ殴ったんだそうで・・・。その証拠に、大仏の頭をみるとコブだらけ(笑) どこで聞いた話か忘れてしまいましたが、けっこう気に入っています。
< 2008/04/08 >
今回は「噛む」ことのお話です。
皆さんご存知のことと思いますが、よく噛んで食べることはとても大切なことです。 よく噛むと唾液がたくさん出ます。唾液は虫歯や歯周病を予防し消化を助けます。よく噛むと脳細胞が刺激され全身も活性化されます。また、生活習慣病やがん予防にも効果があります。 ところが、現代人は柔らかい食事を好む傾向にあり、噛む回数が少なくなってきています。遠く昔、卑弥呼のいた弥生時代には、1回の食事に約4000回咀嚼していたといわれています。これに比べ現代人は1回の食事に620回しか噛んでいないのです。第二次世界大戦以前は1200回ほど噛んでいたといわれていますから、60年あまりで、噛む回数は半減したことになります。
ファーストフードや加工食品を始め、最近の食事は、柔らかい=おいしいという傾向にあり、よく噛まなくても済んでしまいます。子供のころからこういった食事を続けていると、あごの成長発達が充分でなく歯並びが悪くなったり、噛む筋肉の衰えにより顔の表情が乏しくなったりと様々な障害が引き起こされてきます。
今の子供たちが好んで食べるメニューで忙しいお母様方もつい頼ってしまう、あまり噛まずにすむ食事の頭文字を並べて「ははきとく・おかあさんやすめ」というのがあります。
は ハンバーグ
は ハムエッグ
き ギョウザ
と トースト
く クリームシチュー
お オムレツ
か カレーライス
あ アイスクリーム
さん サンドイッチ
や 焼きそば
す スパゲティー
め めん類
これに対して、お米を主食としてきた日本人の体に適していて、「よく噛む」という観点からも積極的に取りたい食べ物の頭文字を並べると「まごわやさしい」となります。
ま まめ(豆類・大豆製品)
ご ごま(ゴマ・ナッツ類)
わ わかめ(わかめ・昆布などの海藻類)
や やさい(特に緑黄色野菜)
さ さかな(特に青魚)
し しいたけ(しいたけ・きのこ類)
い いも(イモ類 ジャガイモ・サツマイモなど)
どれもたんぱく質・ビタミン・ミネラル・食物繊維などが豊富で、これらをバランスよく摂取することが大切です。 噛む回数は、食べ物によって変わってきます。噛み応えのある食材選びのポイントは、噛み砕くのに力のいる硬いもの(ゴマやナッツ類など)、食物繊維が多く良く噛まないと飲み込めないもの(ゴボウやレンコン、切干大根など)、弾力があり噛み切りにくいもの(こんにゃくやきのこ類など)を上手に取り入れることです。 さらに、野菜の切り方を大きくしたり、加熱時間を調節するなど調理方法にも工夫をしてみてください。
大切なことは「噛む習慣」を身に付けることです。噛むことは、健康・美容・アンチエイジングに直結しているのです。日常の食生活で「噛む」ということに対する意識を高めて、充実した人生を送りたいものです。
では最後の言葉遊びは、「噛むことの効果」の頭文字です。 「ひみこの歯がいーぜ」(学校教育研究会標語資料参考)
ひ 肥満を防ぐ
よく噛むと脳の満腹中枢が刺激され食べすぎを防ぎます
み 味覚が発達する
よく噛むことで食材本来のおいしさを味わい、味覚が発達します
こ 言葉の発音がはっきりする
噛むことは口の周りの筋肉を発達させ、きれいな発音となります
の 脳の発達を促す
噛むことで脳に酸素や血液がより多く送られ活性化します
歯 歯の病気を防ぐ
唾液の分泌が増加し、虫歯や歯周病を予防します
が がんを予防する
唾液に含まれる酵素に発がん物質の作用を消す働きがあります
30秒以上唾液に浸すことによが効果的といわれています
いー 胃腸の働きを促進
よく噛むと消化酵素が胃腸の働きを助けます
ぜ 全身の体力向上
よく噛むと食いしばることができ全身に力がみなぎります
やっぱり「よく噛むこと」は良いことばかりです。
< 2008/03/19 >
少しずつ暖かくなって春がもうそこまでやってきています。 真冬には5時にはもう真っ暗だったのに、日が落ちるのも随分遅くなりました。昼と夜の長さが同じになる春分の日も、もう来週ですね。
春は入学の季節。真新しいランドセルを毎日背負ってみては「早く小学校に行きたい~」とはしゃいでいる姿を見て、子供の成長に目頭を熱くしているお父さんやお母さんも多いことでしょう。 もちろん体の発育とともに、お口の中もどんどん成長していきます。6歳頃から永久歯が生え始め、12~14歳頃までに次々と大人の歯へと生え替わっていきます。
新一年生のお口の中は、平均的には乳歯列の後方の歯のなかったところに新たに「6歳臼歯」と呼ばれる永久歯(第一大臼歯)が生えてきています。乳歯は左右5本ずつ(上下全部で20本)ですから6番目の歯があれば、それが永久歯です。 この6歳臼歯のほかに、下の乳前歯2本が抜け永久歯に生え替わっているお子さんも多く、また、上の前歯2本が永久歯に替わっているお子さんもいるでしょう。
「6歳臼歯」はこれからのかみ合わせの基本となる大切な歯なのですが、完全に生えるまでに虫歯になってしまうことがとても多い歯なのです。 というのも、前述したように乳歯が抜けてその後に生えてくるのではなく、一番奥にゆっくり生えてくるので、本人も親も気が付かないでいることが多く、注意が向けられないということがまず原因にあります。山下歯科医院でも、他の虫歯などで見えたお子さんで「これは大切な大人の歯ですからしっかり磨いてくださいね」とお話して、初めて永久歯と知るお母さんも結構いらっしゃいます。 また、気づいていても、歯茎から頭を出してから完全に生えきるまで1年近くかかるため、手前の乳歯との段差や盛り上がった歯肉に邪魔されて磨きにくい期間が長いということも虫歯を作りやすくしています。かみ合わせの面は何とかがんばって磨いても、外側の面(頬っぺた側)にうまくブラシが当たりきらずに虫歯を作ってしまうケースも多いです。
「6歳臼歯」といっても、5歳で生える子もいれば、8歳近くになってから生えてくる子もいます。永久歯への生え変わり時期は、個人差があり、目安となる年齢に対して1~2年の前後ならあまり心配いらないことがほとんどです。しかし、稀に後継永久歯が先天的に欠損していることなどもありますので、日ごろから親がお子さんのお口の中をよく観察することがとても大切です。 生え替わり期(乳歯から完全に永久歯に替わってしまうまで)のお口の中は、歯並びがデコボコでハブラシの毛先が当たりにくく、抜けるために動き始めた乳歯の周りは汚れが溜まりやすく、生えたての永久歯は歯面を構成しているエナメル質もまだ幼弱で虫歯や歯肉炎になりやすいので、一人で磨けるようになっても、しっかり点検して必ず「仕上げ磨き」をしてください。「デンタルフロス(糸ようじ)」の併用もとても効果的です。
お父さんお母さんが、こうして常にお子さんのお口の中を観察していることにより、乳歯から永久歯への生え替わりに問題が生じた場合も早めに気づくことができます。 永久歯は、乳歯の歯根の下方で徐々に形成され育ち、時期が来ると乳歯の歯根が永久歯に押されて吸収されて無くなってくることにより乳歯がぐらぐらして抜け落ち、正しい場所に生えてきます。 しかし、乳歯をひどい虫歯にしてしまっていたり、永久歯の位置がずれていたりすると、乳歯の歯根がうまく吸収されず、乳歯が抜けないうちに横から永久歯が生えてくるなど、永久歯の歯並びにも多きな影響が生じてきます。そうなると、早急に乳歯の抜歯が必要になることも多々あります。 また、同じ位置の左右の歯の生え方に大きな時間差が見られる時は、後継永久歯の先天的欠如などが疑われ、対策が必要なこともあります。 とにかく気になることがあったら、早めに歯科医院に相談に行かれることをお勧めします。
永久歯列が完成するまでは、必ず「仕上げ磨き」をして、お子さんのお口の中をよく観察点検してあげてください。 乳歯列期、あるいは乳歯と永久歯の混合歯列期の虫歯と歯肉炎は、お父さんお母さん・保護者の責任です。
< 2008/03/12 >
3月2日の日曜の夜、BS-iで「健康を脅かす歯周病」という番組を放送していたのを見ました。このときは再放送ということでしたが、Vo.1とVol.2の1時間番組を2本、7時から9時までの2時間のON AIR でした。
テレビでは、毎日のように医療関連の情報や番組が放送されています。 産科や小児科の医師不足や救急医療などの過酷な労働実態などの問題、医療費削減による国民皆保険診療体制の崩壊などを取り上げた社会派番組。脳外科や心臓外科などの神の手といわれる名医を取材・紹介するものや、最先端医療を取り上げ医療の未来をうらなうもの。日常の見逃しがちな些細な自覚症状に潜む重篤な疾患を見逃さない方法や、特別な器具や設備がなくても手軽にできる健康増進体操など、多岐にわたるテーマが取り上げられています。体に良い或いはダイエット効果のある食べ物の情報などでは、データの改ざんなどという不祥事も一時期問題になりましたが、健康への国民の関心は当然ですがやはり高いようです。
そんな中で、最近歯科医療関連の情報番組が増えてきたことを私はとてもうれしく思っています。 昔ながらの「歯医者=痛い・恐い」というイメージがなかなか拭い去れないのか、痛くならないと歯医者に行かない、痛いところを削って詰めたらおしまい、腫れが引いて痛くなくなったらもう行かない、という方も残念ながらまだまだ結構多いのではないでしょうか。 でもこれでは、お口の健康というよりも全身の健康を保つことはできません。
では、話を「健康を脅かす歯周病」に戻しましょう。 この番組では、歯周病と全身疾患との関連についてレポートされていました。 歯周病については機会があるごとにお話してきましたが、口腔内の慢性感染性疾患です。お口の中には億単位の細菌が常在しています。その中の歯周病菌が歯と歯茎の間のポケットと呼ばれる溝の中で活動性を増し、毒素を放出し歯の周りの骨を溶かしていくわけです。40歳代では80%以上の人が罹患しているといわれている歯周病ですが、放置しているということは、平たく言えばポケット内でそんな歯周病菌を飼育し、着実に培養して増やしていることに他ならないのです。 お口は食物の入り口ですから食道・胃へとつながっています。また呼吸器でもあるわけで、気管・肺へもつながっていることは皆さん知っていますよね。ということは、歯周病菌はたやすく体内に侵入するということです。
番組では「誤嚥性肺炎」を取り上げていましたが、これは皆さん結構容易に結びつきを連想できるのではないかと思います。特にお年寄りや体が弱くなっている方は飲み込む力(嚥下機能)が弱く、うまく飲み込めず、食物が気管に入ってしまうことが多くなります。また、気管に入ってしまった異物を吐き出す力も弱いので、口腔内環境が悪いと誤嚥性肺炎を起こす頻度が高くなり、この肺炎がもとで容態が悪化してしまうことも多いのです。
また口腔内の歯周病菌がリンパや血管を通って体内に入り、例えば心臓の弁を破壊し「心不全」を起こさせてしまったり、冠動脈に影響を与え「心筋梗塞」を引き起こしたりする可能性も語られていました。歯周病があると心筋梗塞を起こす率は3倍になるといわれています。 また、歯周病菌に対して体の免疫機能が働く時にサイトカインというたんぱく質が作られますが、これに影響され「低体重出産」の危険性が5倍になることも報告されていました。
さらにこのコラムでも過去に紹介してきた「骨粗しょう症」や「糖尿病」との関連も当然出てきていました。 あまり聞きなれない病気では、「バージャー病」が取り上げられていました。日本には約1万人の患者さんがいらっしゃるそうですが、これも歯周病菌との関係があるようです。
歯周病に罹患すると、歯と歯茎の間に「歯周ポケット」ができることはお話してきましたが、このポケット内面を顕微鏡で観察すると「潰瘍」状の病態がみられます。ある進行した歯周病患者のこの潰瘍部分をつなげて表面積を合計したら、その面積は約70平方cmにもなったそうで、これは大人の手のひらとほぼ同等の面積だそうです。 これは驚きです。もし胃にこんな大きさの潰瘍があったら・・・ですよね。
今回は、BS放送の番組をこのコラムで取り上げましたが、2週間ほど前には地上波テレビ朝日系「最終警告!たけしの本当は恐い家庭の医学」でも「なぜ歯茎の出血から心筋梗塞に」「なぜ歯周病から糖尿病に」が放送されていましたので、こちらはご覧になったという方も多いのではないでしょうか。
10年ほど前、アメリカの歯科医師会では「Floss or Die ?」というキャンペーンが大々的に行われました。これはハブラシだけでなくフロス(糸楊枝)をも使うことに始まる口腔内のより徹底した健康管理を選びますか?それとも無関心で死への道を選びますか?ということです。ここまで読んでこられた皆さんは大いにうなずけることと思います。 「痛くなくても歯医者に行く」ことが健康管理の第一歩で「定期的に口腔内をメインテナンスしていくこと」が豊かな人生のためにはとても大切なことなのです。
Floss or die ?
< 2008/03/04 >
世界保健機構(WHO)は、2月7日に喫煙による健康被害に関する報告書を発表し、この中で、喫煙が原因となって死亡する人が21世紀中に累計10億人に達すると予測しました。 報告書によると、肺がんや心臓疾患など喫煙を原因とする病気で、20世紀には約1億人が死亡した。現在は、世界で毎年推計540万人が喫煙のため命を落としているが、喫煙人口は途上国を中心に増加している。規制強化などの措置が取られない限り、死者の数は2030年には、年間約800万人に増加する恐れがあるという。WHOは\x{fffd}@たばこ税を重くする \x{fffd}Aたばこ広告の禁止 \x{fffd}B禁煙する意思を持つ人への手助け \x{fffd}C受動喫煙被害の減少 などの措置が効果的だと勧告している。(平成20年2月8日付 読売新聞)
1980年から約2000人を約20年追跡した結果、40歳時点の平均余命は、たばこを吸わない男性では42.1歳なのに対し、吸っている男性では38.6歳と、3.5年短いという研究結果もあります。(平成18年度厚生労働省研究班・村上らによる)
日本人の喫煙率は、2005年の統計では、男性45.8%(約2281万人)女性13.8%(約739万人)です。世界的に喫煙人口は減る傾向にあり日本でも同様ですが、ここ数年では逆に若い人、特に若い女性の喫煙率は高くなってきています。 全世界の喫煙者数は約13億人で、そのうち中国の喫煙人口が1/3といわれています。また、スウェーデンはたばこ税率を上げすぎて、喫煙人口が減り税収が減ったため、再度税率を下げて喫煙人口が増加しているという話も聞いたことがありますが、統計上に表れているのか私は確認してません。
しかし、たばこの健康への害は明らかで、たばこのパッケージにははっきりと喫煙による肺がん等の発生リスクが明記され、受動喫煙被害への措置として病院や公共施設のみならず路上喫煙禁止条例等が設けられ、喫煙が制限される方向へ進められています。
たばこの煙にはニコチン、様々な発がん性物質・発がん促進物質、一酸化炭素を始め、多くの有害物質が含まれています。 喫煙により、心拍数の増加、血圧上昇、末梢血管の収縮、一酸化炭素が赤血球のヘモグロビンと結びつくことによる血液の酸素運搬能の阻害など、心臓・血管系への急性影響がみられます。また、喫煙習慣により、肺がんや喉頭がんをはじめとする種々のがん、虚血性心疾患、慢牲気管支炎、胃・十二指腸潰瘍などの消化器疾患、その他種々の疾患のリスクが増大します。妊婦の喫煙は、低体重児、早産、妊娠合併症の率が高くなります。
口腔内への影響では、歯周病になりやすくなることが近年クローズアップされてます。
タバコを吸う人は、吸わない人に比べて3倍歯周病にかかり易いと報告されていて、喫煙本数が多いほど歯周病も重症化することも分かっています。ではどうして喫煙が歯周病を悪化させてしまうのか?というと、
1、歯周病菌と戦う白血球の機能が低下してしまう。
2、歯肉に酸素や栄養を供給するのに大切な血管が収縮してしまう。
3、歯肉を修復するために必要な線維芽細胞の働きが抑制される。
4、歯と歯肉の境目にあるポケット内の酸素が不足し、酸素が嫌いな歯周病菌にとって繁殖しやすい環境となってしまう。 などの理由があげられます。
歯周病を治すにはプラークコントロールがまず第一です。しかし、毎日の歯磨きを含めた正しいプラークコントロールと適切な歯周病治療がなされても、喫煙習慣があると歯周病はなかなか改善しないのです。ですから、禁煙は歯周病を予防・治療するために大変重要不可欠なのです。
また、喫煙は歯周病だけでなく、お口の中にいろいろな悪影響を与えます。 ヤニによる歯の着色の他に、歯茎にメラニンが沈着して歯肉が黒くなったり、線維性のゴツゴツした歯肉になったりします。 また舌苔(ぜったい:舌の表面に苔のようにみえる歯垢と同じ細菌のかたまり)にヤニが沈着し口臭を発します。さらに味蕾(みらい:舌の表面などにある味覚を感じる器官)の機能も低下させ、味覚を鈍麻させてしまいます。ですから、タバコをやめると食べ物がおいしく感じるのです。 味が感じにくくなるわけですから、自然と味付けは濃くなり、これが高血圧等生活習慣病の原因にも繋がるのです。 口の中にできる舌がんや歯肉がん、咽頭がんや喉頭がんのリスクも非常に高めます。
このように口腔に関してのみにおいても、禁煙は、歯周病だけでなく、口腔ガンのリスクが減る、口臭がなくなる、食べ物がおいしく感じるなど、いいことばかりです。 昔、某百貨店の広告コピーに「おいしい生活」というのがありましたが、まさに禁煙はいろいろな意味で“おいしい”のです。
タバコをやめますか?それとも「おいしい生活」を放棄しますか?
< 2008/02/15 >
重い歯周病でひどくやせたあごの骨に骨髄の細胞を入れ、骨を再生させる治療が成果をあげている。東京大医科学研究所の各務(かがみ)秀明客員准教授らの臨床試験で、10人中8人でインプラント(埋め込み型の義歯)を入れられる状態まで骨が厚くなった。有力な治療法の一つになりそうだ。20日開かれた歯科インプラント治療のシンポジウムで成果が報告された。 重い歯周病では歯が抜けるだけでなく、歯を支えていたあごの骨もやせ細っていくことが多い。骨の厚さが5ミリ以下になると、義歯が入れられなくなる。義歯を入れるには、これまでは腰や、あごの別の部分の骨を移植するか、人工骨を使う治療しかなかった。 チームは東京医科歯科大などと協力、2年半前から臨床試験を始め、10人の患者から骨髄を採って培養した。このうち8人に、骨が欠けたときの治療などで使う補填(ほてん)材と一緒に、薄くなったあごの骨に盛った。 半年後に8人とも義歯を埋め込めるまで再生。1年経過した5人ではもとの骨との境目が見えなくなるほどに回復した。 課題は、得られる細胞の質や増え方に、まだばらつきがある点だという。各務客員准教授は「今回の方法なら骨髄の採取は外来、細胞の移植も1泊2日でできる。中高年の患者に対し、体の負担が少なくてすむ」と話している。 ( asahi.com 20年1月21日付)
このところの再生医療の研究成果にはとても驚かされます。
成人の80%以上に認められる歯周病は、歯槽骨(歯を支えているアゴの骨)が徐々に吸収して(溶けて)いく疾患ですが、初期から中期ではあまり症状がないため、気がついた時には重篤化していることも多い恐いしい疾患です。 重度の歯周病により多数歯を失ってしまった場合には、骨量の不足からインプラントの植立は難しく、可撤式義歯(取り外し式の入れ歯)を使用する場合でも、歯槽骨の吸収により義歯の安定が得られず十分な咀嚼機能が回復できないことが多いのです。 ですから、あごの骨の再生が日常診療の場で可能になれば、これはとても大きな福音となります。 もちろん、歯周病にならないようにすることが何より大切ですから、そのための定期健診やメインテナンスを怠ることのないように!ということは言うまでもなく、くれぐれも本末転倒にならないように。
マウスiPS細胞については過去のコラムでも取り上げましたが、角膜再生の研究も成果が出たようですので書き添えておきます。
東北大の西田幸二教授(眼科)らのチームが、マウスの体細胞から作られた万能細胞(iPS細胞)を使い、角膜になる幹細胞にまで分化させて培養することに、京都大との共同研究で成功した。今後、人間のiPS細胞を使った実験を計画、すでに臨床応用されている角膜移植などと組み合わせることで拒絶反応のない再生治療の実現をめざすという。
iPS細胞による角膜再生の流れ
西田教授らは、京都大の山中伸弥教授からマウスのiPS細胞の提供を受けて、1年半前から研究を始めた。iPS細胞を1カ月ほどかけて増やした後、薬剤を使って分化を誘導し、角膜細胞の前の段階の細胞を取り出し、培養することに成功した。今後、角膜の細胞に完全に分化させる手法を確立し、臨床応用につながる細胞シートの作製につなげたい考えだ。 角膜の治療は、他人の角膜や角膜の細胞を培養して作ったシートを移植する方法と、患者本人の角膜細胞から作ったシートを移植する方法の2種類がある。ただ、他人の角膜を使う方法では拒絶反応を避けられず、患者本人の角膜からシートを作る方法は病気のためにうまく細胞が増えないなどの問題がある。患者の健康な部位からiPS細胞ができれば、そうした課題を克服できる。 今回はマウスでの成果だが、原理的には人も同じ手法で分化・誘導を実現できると考えられるという。西田教授は「ヒトのiPS細胞でも再現できれば、拒絶反応がなく、質が高い細胞シートを使った治療法を比較的早く実現できるのではないか」と話している。( asahi.com 20年1月26日付)
< 2008/01/26 >