名古屋大は6日、乳歯から骨や神経など様々な細胞に分化する能力を持つ「幹細胞」を取り出し、再生医療に役立てる研究をするため、学内に「乳歯幹細胞研究バンク」を設立したと発表した。乳歯は同大付属病院など6病院から提供を受け、数年で1万個程度の幹細胞を収集、研究データを集めて臨床応用を目指す。同大によると、大学などの公的機関に乳歯の幹細胞バンクを設置するのは世界初。 バンク設立したのは、医科系研究科の上田実教授らのグループ。提供された乳歯や親知らずから、幹細胞を採取して培養。超低温で保存して研究する。 幹細胞を使った再生医療では、骨髄や臍帯血があるが、乳歯の幹細胞はこれに比べて、細胞の増殖能力が高く、採取が簡単な事から、実用化に期待が集まりそうだ。 上田教授らは子犬の歯から取り出した幹細胞で親犬のあごの骨を再生できることをすでに確認しており、近親者の再生医療に使える可能性もあるという。上田教授らは犬の実験例を重ねて研究結果を発表したうえで、厚生労働省や学内の倫理委員会の審査を経て、人の臨床実験を実施したいとしている。 上田教授は「将来的には、孫の乳歯で祖父母の骨粗しょう症による骨折や傷跡などを治療できる可能性がある」と話している。(12月7日付読売新聞)
最近、再生医療の研究が着実にその成果となって次々に報告されています。 キーワードは「幹細胞」ですね。
昨年8月には、京都大学再生医科学研究所の山中伸弥教授らが世界で初めて、マウスの皮膚細胞から万能細胞(誘導多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell=iPS細胞)づくりに成功したことが発表され、大きな話題となりました。さらに今年に入り、先月21日には、ヒトの皮膚からヒトiPS細胞の作成に成功したことを発表しました。
iPS細胞は、高い増殖能と様々な細胞へと分化できる万能性(分化多能性)を持ち、倫理的問題も克服することができるため、脊髄損傷や若年型糖尿病など多くの疾患に対する細胞移植療法につながることが期待されます。また患者自身の体細胞からiPS細胞を誘導することにより、移植後の免疫拒絶反応も克服できると期待されます。
山中教授と同時に成果を公表した米ウィスコンシン大と並び、今月4日、米ハーバード大学のコンラッド・ホッケドリンガー助教授が率いる研究チームもiPS細胞の作成にほぼ成功していること事を打ち明け、山中教授は「知っているだけで既に6研究室がヒトiPS細胞を手にしている」いう(12月8日付読売新聞)。 さらに、科学誌「サイエンス」電子版12月6日付には、米ホワイトヘッド研究所(マサチューセッツ州)のチームが、iPS細胞を使ってマウスの貧血症を治療することに成功したことが発表されています。
日本を筆頭に、世界中の研究者たちでとても激しい研究競争が繰り広げられているようです。 10年後、いや数年後には、今日ではまだ思いもつかぬ再生医療の未来が、さらに開けていることでしょうね。